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フランス在住の歴史学徒に「黄色いベスト」について聞いてみる(パート3)

2018.12.29 12:33

近藤司より:ユウタさん、マスヤマコム氏と同じく、ブログでの「黄色いベスト運動」のエントリー、非常に興味深く読ませて頂いております。

実は私は昨日までヨーロッパに来たことが一度もなかったのですが、今生まれて初めてイギリスを訪れていて初の欧州訪問となりました(旅のお供であるパートナーは「もうすぐヨーロッパじゃなくなるけどな」とイギリスのEU脱退について悪態を付いていましたが)。ヒースロー空港で乗った車がフランスの自動車メーカー・シトロエンのものでした。

フランスにおける「黄色いベスト運動」が燃料税の引き上げに対する反対として主張されている中、自動車も面白いポジションにやって来たものだなぁと思いました。アメリカ、カナダ、日本も同様ですが、フランスも「車が必要の無い生活」を送れるのは地下鉄やバスといった公共交通網が発達した大都市のみ。車が無くても困らないというのが所得階層の一面を示しているのは自動車が富裕層だけの物だったことを考えるとなんとも時代の流れを感じます。

かと言ってニューヨークやパリのような大都市は家賃や物価が高く住むのも大変ですよね。ユウタさんのブログを読んでパリと言えどもそんな優雅なもんじゃないんだよ!という切実さが伝わってきます。

さて、「黄色いベスト運動」について私からはちょっと本筋からはズレた質問をしたいと思います。アメリカに住んでいた時、ニューヨークから離れるたびに「ニューヨークはアメリカじゃないんだな」という感覚をよく持ったものでした。ニューヨークはアメリカの中でもかなり特殊で、リベラルだし、大企業が集まっているし、人種も多様だし、政治的な感覚としてもアメリカの他の地域とは根本的に違ってるんだ、というものです。

ドナルド・トランプが当選するなんてあり得ない!と選挙中は思っていたのに当選してしまった時もそうですし、一つ横のペンシルバニア州の郊外などに旅行に行くと白人ばかりでアジア人というだけ(が理由に思える)でジロジロと見られたり、ニュージャージー州では45という背番号のついた国旗のデザインの服を着ている人(トランプ大統領は第45代)や「Blue Lives Matter」のシャツを着ている人をたくさん見かけたり。

大都市圏で人々が信じている価値観(それは概ねリベラルだと思うのですが)と国のその他大部分で人々が信じている価値観がズレる、ということが世界的な現象として起きているように思うのですが、もしもユウタさんに何かパリとフランスのその他の地域を比べてパリの特殊性について何か思うことがあればお聞きしたいです。

とこう書いてしまうと普段ユウタさんがブログで書いていることが答えになってるじゃないか、と言われてしまいそうですが「黄色いベスト運動」とからめて何か改めて思うところがあれば。(近藤司

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世川祐多から:

リアクション1: 日本もイオン・フランスもカルフールへドライブイン!

つかささん、フランスの田舎町へ行きます。すると、「買い物いこうぜ」という時に、行くのは町の中心街の商店街ではありません。というか商店街というものを地方都市は別として、田舎、すなわち村で見たことがありません。 車に乗り、カルフールなどの大型スーパーへ行く。日本もそう。地方を走れば、どこを走っても、イオン右折10kmという看板を見る。 中はどこに行っても同じ珈琲屋、映画館。靴屋。服屋。画一化されている。 田舎者のデートはイオンモールですよ。

田舎の村人の生活スタイルは、日本でもフランスでも、どこへ行っても、同じような商業施設で、 品物の地方差はあれど、同じような購買活動をする。そして、これを支えているのが車であることは、言わずもがな。車なくして田舎の生活は成り立たないというのが、21世紀の列強の田舎者の生活と言えます。

しかし、車を考えてみた時に、日本の面白いところは、排気量が少ないから燃費も良く、税金も安く上がる軽自動車というものがある。日本人の方が、所得がいいし、物価がまだ安いから、田 舎の暮らしはフランスに比べて苦しくないでしょうが、軽自動車はそれを一層助けます。フランスでは、ただでさえ仕事がないし、平均所得が低く、それでいて軽自動車がない。 ドライブイン無くして、生活が成り立たなくなってしまった田舎の社会では、ガソリンの値上がり は日本以上に死活問題です。

馬に乗る社会を取り戻し、中心街に個人商店が栄え、もう一度、人間らしい地方の生活を戻すよ りほかなくなるのでしょうか。 それか、おそらく、これは反発を食らうでしょうが、日本が軽自動車をブランディングして輸出しまくるか。アメリカには合わなくてもフランスの地方の生活にはフィットするはずです。

Q1.:フランスあるいは欧州他国の田舎におけるジロジロ経験

A: アメリカとフランス、全く同じです。日本もそうでしょう。あるベルギー人の親友が、高校生で日本の北陸の田舎町へ留学した際、町中は白人が来たことに大騒ぎ になり、そこらの在所では知らない人はいないぐらいになり、常に目立ってしまったそうです。 受け入れてもらえたからいいものの、とにかく目立った。ということです。

フランスも面白いのが、今私が住む、パリの近郊都市フォンテーヌブローでもそうですが、ブルジョ ワな街は白人ばかり。あるいは、田舎の村はさらに白人しかいません。それでもまだちらほらい るアラブ人や黒人に比べ、アジア人は一層少ないものです。いたとして、なぜかどこにでもある中 華屋を経営する、中国人ぐらいのものです。 アジア人は田舎ではことさら目立つし、日本人は、さらにさらに目立ちます。ジロジロジロジロ みられます。

ただ大都市近郊では、アジア人が行かない方がいい地区や、スーツとかのホワイトカラーな服装 では行ってはいけない地区があります。 郊外の黒人街やアラブ人街に行ってしまうと、それ以外の人種は受け入れてもらえないので、危 険な思いをすることがあるのです。ボービニーという黒人系の治安の悪いパリの郊外に、かつてフランスの白人の友人がすんでいて、 一度研究発表の後に、スーツを着て行ってしまいました。 スーツを着ているということで、すでに場違いで、更にアジア人ということで、たむろしている人 たちから、Fuck Youのポーズをされて罵られたこともありました。
白人地域ではまだ、敵意をむき出しにされたり、威嚇はされません。 そして、こちらが、慇懃に振る舞えば、実に、優しくしてくれます。敵じゃないとわかり、溶け込 む姿勢をみせれば、通常受け入れてくれます。

それでも日本人は世界ではまだまだ珍しい人のようです。かつて、イタリアの田舎町にいた時、僕が歩いていると、真後ろからイタリアの女の子たちが、「あれ中国人かしら?」と聞こえる声で噂していて笑いましたが、日本人とは、「世界のこんなとこ ろに日本人」という番組が成立してしまうぐらい、大都市以外普通は見かけない存在なので、珍 民族のひとつかもしれません。一見服装や物腰がなんか違う中国人とみられるようです。

Q2:ニューヨークはアメリカじゃない!じゃあパリは?

A:「パリはフランスじゃない!」とフランス人がよくいいます。勉学か仕事という必要に迫られてパリにいるだけのフランス人や、パリ人以外のフランス人、そし て、ヨーロッパ人と接すると、パリやパリの人々が嫌いという人にたくさん出会います。偉そう、冷たい、礼儀正しくない、汚い、物価が高いなどの理由です。 確かにフォンテーヌブローでさえ、だいたい皆礼儀正しく、カフェの給仕さんも丁寧です。 パリは丁寧な客あしらいは、超高級な店を除けば、なかなか出会わず、出会ったらラッキーなぐ らいです。 せかせかしていて、つっけんどん、みんなストレスを溜めている。これがパリの典型的な人々なの です。

私の生徒たちもほとんどが「パリ嫌い」と言っています。人の温かみに欠け、住みにくいのです。
もちろん、お金がある人は、ゆとりのある暮らしができるでしょうし、高級店にしか行かず、振る 舞い方も違いますが、それでも、この人たちが成金の場合は鼻につくスノッブの振る舞いがあり、 本当の気品の持ち主なのか、そうでない成り上がりなのかは簡単に見分けがつきます。私もパリに嫌気がさして、また、自分でなんとか生活を成立させるために、パリから出ようと決 めた時に、南仏出のジャズ仲間が、パリだけがフランスじゃないから出て正解だと言ってくれまし た。私もそう思ってます。彼の友達も、パリに嫌気がさしてボルドーへ家族で移住するとのこと です。

このように、観光地としてのパリと、住むパリでは全く様相が違います。また、フランスでは、パリでさえ、そうはそうそう繁華街がなく、数年いれば行く場所が決まっ てしまうぐらいです。なので、ニースやマルセイユといった大都市では、規模としては大宮のよう な日本の首都圏近郊のような小都市であり、コンサートなどのイベントも少なければ、バーや映 画館など行く場所が決まってしまいます。浮気はできません。 誰かと付き合うと、すぐにだれか友達とすれ違って、噂になるといいますが、それは本当だと思 います。パリでさえその可能性はあります。

パリのいいところは、それでも文化の発信地としてイベントやコンサートがは毎日どこかしらであ るということです。フォンテーヌブローにはジャズバーがないので、僕はこの点のみパリが恋しく なります。(世川祐多

 

 

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