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どうやって人と出会うのか?パリもお江戸も都市民はつらいぜ

2018.08.30 22:18

Text by Yuta Segawa   文:世川祐多

私は2012年の秋に単身東京からパリへと渡った。東京やパリ生まれは別として、本物の江戸っ子や、巴里っ子が少ないように、普通、大都市には学業や仕事のため、単身者が集まってくる。

友人もいない街で、単身であるということは、孤独である。それを逃れるには人と会うしかない。夜遊びに繰り出すなり、自分の居場所を見つけるなり、人と触れ合おうとしていかなくては、人と出会う第一歩は生まれない。

江戸は、勤番侍や出稼ぎの農民などで溢れかえる、男過剰の独身男の街であった。今の東京も多くのシングルの男女が溢れかえる。パリもそう。半分は独身。これは昔も今も大都市の宿命と言える。

大都市では人とどうやって出会うのか? 〜ダイレクト編〜

大学。

博士課程では、そもそも博士課程の学生が数えるほどしかいないし、決められた授業もないから出会いは少ない。しかし、フランス人はほとんど修士課程に進んでから就職していくので、修士課程までは、学生仲間がたくさんいて、友情でも恋愛でも気の合う人との出会いがある。

こういうように博士課程でなければ、大都市でも学校が出会いの場になる。パーティーなんかに呼ばれれば、友達の友達へと出会いが広がる。

趣味。

スポーツやジャズといった音楽など、自分の趣味を通して、友達が増える。ホームパーティーなどに呼ばれて、さらに友達の輪が広がるというパターン。恋愛もあり。

職場。

職場の同僚と友達になるというのは、仕事は仕事だから難しいが、職場恋愛からの結婚というパターンは日本同様に多い。学生を終えれば出会いの場などそうそうないから当たり前。

といえども、ダイレクトな出会いで、気の合う仲間やドストライクな恋愛相手に出会うことは難しい。

大都市では人とどうやって出会うのか? 〜インダイレクト編〜

これは、主だって恋愛相手を求める人間が使うが、現代においては多種多様な出会い系サイトが溢れている。

セフレ募集。不倫相手募集。真面目な出会い。ホモセクシャルの出会い。アジア人専門・アラブ人専門・黒人専門・エリート限定など的を絞って対象を選別する出会い。

様々なサイトやコマーシャルがテレビでもメトロの広告でも溢れている。

さあ、しかし、ネットという気軽な媒体での出会いがここまで進化したのに、パリっ子の半数は未だ独身。これはどういうことか。

本当の友達、この人だという恋愛相手に出会う難しさ

みんながみんなそうではないが、普通、学士修士の大学生は、思春期から大人になり、酒を覚え大都会の夜遊びを覚えたてだから、にこやかに生活を謳歌し、友達も増えるわ、恋愛も順調。

問題は彼ら以外の大人たちの出会いである。

博士課程になると、人がいなくなり、研究仲間は会社の同僚のようなもので、通常友達という訳でもないし、内向的な人も多いから、それまでの学生生活とは違ったハリのないものになる。数人の仲間の中で、こいつ面白いな、この人いいな、というものは普通ない。研究者なんてそんなもの。

また、大都市に色濃くなる問題として、いつも人口過多の街で息苦しく、日々の生活に追われ、満員電車に乗り、狭い家に暮らし、疲れ果てるというストレスがある。

さらに、太陽不足を補うビタミン剤を飲まなくてはならないほど、秋冬春先に太陽のないパリの人間なんて、みんなイライラして、疲れて、日本同様鬱や自殺のオンパレード。そういうストレスを溜め曇った表情の気質の人に、いい出会いは訪れない。

人間は通常心身ともに健康で英気が満ち溢れ、自然とにこやかにいる時にこそ、様々の楽しい出会いの連鎖が起こっていく。

でもパリにはパーティーが多い。それは、少しでも誰かと出会いたいという人間の本能だろう。

しかし、パリのパーティーは、疲れ切った大人たちの酒肴を介した表面的なご挨拶パーティーになることが多い。「あなたはどなたのお友達で?」「何をされて?」「ご出身は?」「左様ですか、興味深うございまして。」という口上の連続。

僕はといえば、薄っぺらいことが嫌いだから、嗅覚を働かせて面白そうな人を探す。いちいち全員に表面的な挨拶を交わしても疲れるだけだし、満遍なくは無理。来られたら別として、こちらからは面白そうな数人、あるいは目があった女に絞る。心身ともに不健康そうな人は見りゃわかるし、目が淀んでいるから、できるだけ生き生きした目の人に近づく。

パリにはオンラインの出会いサイトが溢れているが、やっている人に聞くと、中には運命の相手を見つけたという人もいない訳ではないが、ほとんど戦果がイマイチだという。

「会ってはみたけれど。」「少々お付き合いしたけれど、やっぱり違った。」「体目当てのクソ野郎だった。」などという声を多く聞く。

フランス人は本来保守的だから、新しいものがアメリカのようにはすぐには発展しないのかもしれない。そして、相手をまずはよく見るし、警戒心も強く、同様に、ロマンチストでもあるから、やはりダイレクトな出会いを心の底では欲している。

すると、この花の都の人の渦、忙しない時の流れに比例する表面的な出会いの連続の中で、気の知れた友達の新規開拓、心底惚れて付き合いたい恋愛相手に出会うことは、一層むずかしくなるのである。

ロマンティックのかけらもないオンラインの軽さと、出会いたいのに出会えない、けどダイレクトに出会いたいという絶妙のラインを行くために、東京で流行っているとかいう相席居酒屋とか、街コンとか、そういうのがフランス人には合っているのではと思うのである。

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司さんの文を読んで、もちろんダイレクトな出会いにこだわる人もいるでしょうが、アメリカは合理的ならどんどん機械的なものの恩恵を躊躇なく受け入れて行くのだろうなという雰囲気が感じられました。

メリケンさんたちならいつの日か、ネットの出会いの時代も終わり、ポストモダンが来たら、出会うこともやめ、全て遠隔の人工授精で子孫を残すんじゃないかとか妄想してしまいます。ダイレクトな快楽は脳内のICチップがしてくれるからもう良いと。

他方、ネットの活用やネット上での出会いが隆盛なアメリカの、こういう合理化をどんどんやってしまう精神性が、アメリカのダイナミズムを生むのではなかろうかと。

アメリカという国にも住んでみたいなとも思う。けれど、英語を極めるなら、ロンドンだよなとも思うし。悩ましい。

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