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mim レクチャー #07 増田聡さん(大阪市立大学)・資料集

音楽のパクリについて

増田聡(大阪市立大学准教授・音楽学)

「どこまで似てたらパクリなの?」「パクリとリスペクトの境界ってどこ?」といった(よくある)疑問にはあまり答えられないかもしれません(すみません)。その代わり、われわれが何かを「パクリ」と呼ぶとき「そこで何が起きているか」を美学/芸術哲学の視点からやんわり眺めてみます。
「よく似たメロディ」と「同じメロディ」は「同じ」なのでしょうか? いろんな「よく似た」ポップスを聞き比べながら考えましょう。
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Todd Rundgren “Good Viblations” (1976)
The Beach Boys “Good Viblations” (1966)
トッド・ラングレンによるビーチ・ボーイズのカバー。通常、ポップスではこのような「原曲そっくり」を目指すカバーは行われない。カバーにおいてはほぼ必ず「なんらかの(あたらしい)創作」が行われている。
The Jimi Hendrix Experience “Purple Haze”
Kronos Quartet “Purple Haze”
The Shamen “Purple Haze”
「パープル・ヘイズ」の原曲とカバー2つ。ポップ・ミュージックにおける通常のカバーはこのようなもの。
10cc “I’m not in love”
ザ・ゲロゲリゲゲゲ「I’m Not in Love」(『パンクの鬼』収録)
アルバム曲名表を参照して聴いてください↓
ザ・ゲロゲリゲゲゲによる10ccの「カバー」。これは実質的にはカバーとは言い難いが、形式的には(原曲のタイトルが名指され、その「演奏」として扱われている点で)「カバー」であると見なさざるをえない(ちなみにJASRACへの著作権料支払いは行われていない)。
ポップ・ミュージックにおけるカバーは、トッド・ラングレンとゲロゲリゲゲゲのそれを両方の極とする範囲内で、さまざまなかたちで別作品を参照しつつ「創作」を行い、「同じ曲の異なる演奏」と称する。カバーとは「原曲を再び演奏したもの」というより、二つの「違う曲」の間に構築されるリンク関係と理解する方が適切。
日本で「音楽の剽窃」が争われた裁判例は現時点で二つのみ。
「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」事件と「記念樹」事件
Tony Bennett “Boulevard Of Broken Dreams”
「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」事件で「剽窃された」と訴えがあった原曲(もとは1933年の米映画の主題歌)
石原裕次郎「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」(当日は越路吹雪・歌で聴いた。YouTubeで聞けないためこちらを挙げておく)
「剽窃した」と訴えられた曲。裁判では原告敗訴、つまり「この曲は剽窃ではない」という判決がくだった。
「どこまでも行こう」
「記念樹」事件で「剽窃された」と訴えがあった原曲。ブリジストンのCMソング。
「記念樹」
「記念樹」事件で「剽窃した」とされた曲。こちらでは「ワン・レイニー〜」事件と異なり原告勝訴。つまりこの曲は「著作権侵害」とされ現在ではCDは廃盤。
裁判によって「剽窃」とされた曲であるが、「ワン・レイニー〜」事件の両者と比べて明らかに「こちらは剽窃」と言えるだろうか?
オレンジレンジ「ロコローション」
リリース当初は自作曲だったはずが、2004年紅白歌合戦の放送ではGerry Goffin & Carole Kingの作詞曲と表記され作曲者クレジットの変更が発覚。ネット世論や週刊誌で炎上。のちに、ゴフィン&キングの音楽出版社からのクレームでクレジットが変更された事実が明らかになる。
Little Eva “Loco-motion”
ゴフィン&キングによる「原曲』。しかしそんなに似ていない…(「ロコローション」のサビ終わりのフレーズが “Loco-motion”のAメロと似ているのみ)
Shampoo ” Trouble”
むしろ全体的な構造としてはこちらが「ロコモーション」の雛形となっているように感じられる。
音楽的類似性よりも「タイトルの類似性」という文脈が「パクリ」の認定に影響した一例。
TINY BRADSHAW “THE TRAIN KEPT A-ROLLIN”(1951)
ロック・クラシックの「トレイン・ケプト・ローリン」の原曲。
Johnny Burnette Trio “Train Kept A Rollin’”(1956)
ブラッドショウのバージョンとかなり印象が違うが、著作権者はブラッドショウ。
The Yardbirds “Train Kept A Rollin’”(1965)
著名なヒット・バージョン。著作権者はブラッドショウだがバーネットのギターリフを下敷きとしたサウンド。
サンハウス「レモンティー」(1975)
日本ロック史初期の「お手本の模倣」。明らかにヤードバーズの「トレイン・ケプト・ローリン」が下敷きになっているが、著作権者はサンハウス名義。
音楽的な創作性の継承関係と著作権クレジット(お金の行き先)が別のロジックに属していることがわかる。
Led Zeppelin “The Lemon Song” (1969)
ハードロックの祖であるツェッペリン作曲として当初リリースされたこの曲も、シカゴブルースの大物であったハウリン・ウルフ(ブルースブームであった当時の英国では著名だった)の曲の剽窃であると非難され、のちに作曲者クレジットが変更された。
Howlin’ Wolf “Killing Floor” (1964)
ベースラインの類似性に注目(こういう場合は「注耳」と記すべきか)。しかしこの時点では生成途上にあったハードロックが、音楽史の中に確固とした位置を占めた歴史を経たこんにち、ツェッペリンとハウリン・ウルフによる二つの曲は「全く別物」に聞こえてくる。そのことは、音楽の類似性を発見し「パクリ」とみなす聴取のありようが、歴史的な聴取の文脈変容、すなわち「音楽のどの側面を重要なものとして聴いているか」の違いに左右されているという事実を指し示している。

 

mim レクチャー #05 渡辺志保さん 資料集

    「米ヒップホップ・シーン、ヒットの仕組と傾向」
    インターネットとミックステープ、セレブ・カルチャーから炎上問題、そして世論との関わり方まで、どんどん巨大化するアメリカのヒップホップ・シーンと、ヒット曲が生まれる仕組みについて。

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iTunesプレイリスト(入退場時のBGMとして使用したもの)

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Youtubeプレイリスト(レクチャー内で使用したもの)
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mim レクチャー #04 冨田ラボさん・資料集

冨田ラボ「録音された音楽作品の聴き方」
70年代~現代の録音作品から聴こえていること+聴き手への作用の分析、考察
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使用ソングリスト解説

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1.mim_Lecture_1_1968

本論である70年代以降に入る前に、ポップス録音としては重要である60年代にも触れておくことにしました。ポップス(ロック)、ブラック・ミュージック、ブラジル、アフリカ、そしてジャズを68年作品に限定して連続再生しました←5秒~10数秒単位。60年代を本論から省いた理由、抜粋を68年作品に限定した理由も説明しました。

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2.mim_Lecture_2_Al_Jarreau

まず76年リリース「Rainbow In Your Eyes」を分析しました。ジャズ・シンガー → ポップ・シンガー への変遷を考察しました。80年リリース『This Time』より「Never Givin’ Up」を分析、ポップス作品としての完成度の理由を考察しました。

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3.mim_Lecture_3_SD

書籍「ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法」に関連する小ネタから始めました。楽曲分析としては「The Goodbye Look」を補足しました。冒頭採用された当時最新鋭のデジタル・シンセのデモ演奏を動画で確認しました。曲中盤での定位への厳格なこだわりに言及し、別曲の例として「Black Cow」のI~A前半を解説しました。Cセクション締めの(構造的にたいへん重要な)ヴォーカル・フレーズが2コーラス目では歌われず、ギターにより演奏されるという特徴的、効果的な手法について、楽曲を通じてギターがサブ・メロディとして機能しているという観点を追加して論じました。

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4.mim_Lecture_4_Earth_Michael_Lo-Fi

Eart Wind & Fireの80年リリース『Faces』を題材に、エンジニアリング、オーディオという観点を中心に論じました。一曲目「Let Me Talk」を中心に、マスタリング4種も聴き比べました。

ジョージ・マッセンバーグのエンジニアリングについて言及する際、Tubes『Outside Inside』から2曲のさわりを再生しました。補足しますと『Outside Inside』のミックスはウンベルト・ガティーカが中心(D・Foster_Pro作品)ですが、再生した2曲(もしかしたら+あと1曲)のみマッセンバーグ・ミックスです。リアルタイム初聴時、情報なしでその2曲に圧倒的なクオリティを感じました。

Michael Jackson『Off The Wall』を駆け足で分析、考察しました。ブルース・スウェディンについてももっと言及する予定でしたが、ここで時間切れ。

この項ではエンジニアリングという観点から80~90~00~10年代という変遷を解説することを予定していました。ヒップホップ、Lo-Fiという概念、質感というワードの登場、メインとオルタナティヴという図式の崩壊、すべてが並走するイメージなどをプレイリストを聴きながら考察する予定でした。

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5.mim_Lecture_5_00~10′s

ここでは近年の作品について解説する予定でした。現代ジャズ、ブラック・ミュージック、リズム~ドラミングといった項目が予定されていました。

URL表にあるように、動画も絡めた考察が多くなったと予想されます。Tank and The Bangas とNo Name について、前者のパフォーマンスの素晴らしさと、しかしその良さを表現できている音源の不在(近年リリース作がない)、後者の音源の素晴らしさ(しかも無料というソーシャル・エクスペリメント周辺の手法)と、パフォーマンスから感じられる質感の乖離について考察する予定でした。

リズム~ドラミングについては、訛りとメトリックモジュレイションを動画で解りやすく解説する予定でした。

マシン・ドラム、サンプル由来の訛りの源流を体験するため、該当するビートを含むプレイリストを項目_1の68年リストのように数秒単位で抜粋再生する予定でした。

参考URL

タンク アンド ザ バンガス

ノーネイム

アンダーソンパック

 

ロナルドブルーナー

 

ジュリアナ

 

トニー

cheis dave

Vinnie

Daniel Lanois opera

ホセ ジェイムズ スペイヴン

ハイエイタスカイヨーテ

DSK Synerzy